分析と妄想

分析と妄想

タロット知識と読書と生活改善みたいな

誰かの話を求める心

あだ名で呼び合う会社にいたことがある。

 

そこでは毎日、5分程度のビジネスお役立ちおもしろスピーチを求められていた。初日の朝にそれを聞かされててんぱった私は手持ちのビジネスネタの中からアニメイトの成り立ちを語った。読んでてよかったアニメ店長

あとアゲ太郎とか夢小説の話とかした。

 

他人の話を聞きたい欲、というのは、獣から文化的生物へと進化してはじめに湧き上がった欲望だ。読書もその派生。

 

人類で二番めに古い職業は語り部だという。

語り手の物語は多い。千夜一夜物語アラビアンナイトとか。

 

あるところに「毎晩処女を呼びつけては翌朝処刑」という処女厨極まる王様、シャフリヤールがいた。

毎夜毎夜女性が処刑されて行く中、ある日呼びつけた女性にその姉が同行してきた。姉は明日の朝には処刑される妹のためにおもしろショートショートを語り聞かせた。

「お姉ちゃんもういっこお話聞かせて!おもしろかった!ね、王様!」と妹は次の話をせがんだ。王様もすっかり引き込まれたのでこれに同意、妹のもう一回コールは朝まで続いた。

で、朝が来ると姉は口をつぐんだ。

「明日の夜になったらもっとおもしろいお話を聞かせられるんですけど時間切れですね、帰ります」

 

で、このやり方を繰り返すこと一千回。千と一夜めに王妃となった超級ストーリーテラーのこの姉こそがシェヘラザードである。

 

シェヘラザードも律儀に毎夜完結ものを提供していたわけでなく、「今日はここまで、もう遅いので続きは明日にしましょうね」で展開をひっぱって翌日までの延命をはかっていたようである。そこで王がいや気にならんからもういいわとなれば打ち切りが文字通りの即死となる状況だった。

シェヘラザードは打ち切り(=死)を回避するために「このあとどうなるの?え?想像もつかないんだけど」というヒキをしばしば行なっており、続きはその時点でシェヘラザードも決めていなかったようだ。そのため、千夜一夜物語には整合性の取れない展開がそこそこあるという。ジョジョかな?

(実際、千夜一夜物語はシェヘラザードが語ったというていで集めた民話集らしいけど)

 

社風や業務のあり方には疑問の多い会社だったが、あの朝会はわりと好きだった。数人の会社とはいえ毎朝全員話をしていればそれだけで30分はかかる。雑学に30分、持ち回りではなく毎日だ。

どうしてあんな慣習があったのかといえば、あだ名で呼びあう決まりにしたことや、一度だけ職場へ来た妻子の様子や近隣のコンビニ店員と親しくなっていたりとか最近はPTAに積極的に出て行って仕切っているとかいう話から推察はできる。

 

あの会社は利益はやたらすごくて、しかも社長一人で5人くらいは軽く養えて、つまり、社員はろくに利益を出していなかった。びっくりだ。

金を追う必要がないほど、豊かで、でも孤独。シャフリヤール王だ。

退屈で、退屈で、寂しかったんだろう。

他人の話を求めるのは、どんな状況であったって寂しさが必ず含まれていると考えている。だからテキストサイトは読まれてきたし、素人ブログも読まれるし、まとめサイトはPVガン上げするのだろう。

 

今もあの会社のブログを見に行くことがある。いつも新入社員の自己紹介エントリがあがっている。

まだ朝会のおもしろトーク習慣は続いているのだろうか。